Quantity・Quality・Stability(量・質・安定) ― いま、日本のゴルフに問われているもの

 

今年、米国NGFは90年という大きな節目を迎えました。
全米のゴルフ施設とコースを追跡し続けてきたデータベースは、単なる統計資料ではなく、ゴルフ産業の構造変化そのものを映し出す
鏡といえます。米国のゴルフ施設は約14,000、コースは約16,000あり、ここ5年間はほぼ横ばいです。2000年代にコースが増えすぎ、リーマンショック後に閉鎖が続き、20年ほどかけて整理されてきた経緯を経て、現在、市場は均衡点に到達しました。閉鎖は減少し、改修や再建が進み、供給側は過去にないほど健全な状態にあることが報告されています。

さらに注目すべきは、新規開発の「質」です。2026年初頭時点で140以上の新コースが計画・建設中で、その多くがプライベートクラブや高級リゾート型のようです。量ではなく価値を磨く方向へと明確に舵が切られています。しかも新規開場はフロリダ、テキサス、サウスカロライナの3州に集中しており、戦略的かつ選択的な成長が見られます。土地・建設コストの高騰により、1990年代のような無秩序な拡大は起こりにくく、結果として、米国コースの質は過去最高水準にあるとされています。

米国NGFが示した「Quantity・Quality・Stability(量・質・安定)」という三つの言葉は、単なる市場分析ではなく、成熟市場がどのように均衡を取り戻したのかを、その構造が示しています。しかし、その報告を読みながら、私はどうしても日本のゴルフの現状に思いを巡らさずにはいられませんでした。

日本のゴルフ場は、普及期から成熟期へと進みましたが、その歩みは米国以上に商業主義的側面が強かったことは否めません。バブル期の大量開発、会員権市場の高騰、価格競争への傾斜。構造的な再編は進みましたが、教育と育成の体系化という点では、米国に比べて大きく遅れをとっているのが現実です。

さらに、日本は人口減少社会に入り、団塊世代の縮小が進み、新規ゴルファーの創出は容易ではありません。市場が自然に回復するという楽観は通用しないでしょう。むしろ今こそ、危機感を持つべき時です。米国が「供給の安定」と「質の向上」によって均衡を築いたのに対し、日本はまだ「次世代をどう育てるのか」という根本課題に十分向き合えているとは言えません。

ゴルフの施設数の問題ではなく、文化と教育の問題です。どれだけコースが残るかではなく、どれだけ意味あるゴルファーを育てられる環境を整えられるか。商業的成熟の次に来るものは、文化的成熟ではないでしょうか。

米国のデータは、成熟市場が量から質へと転換する姿を示しています。日本はそこに体系化された教育という軸を加えられるのか。私たちは、次世代にどのようなゴルフ観を手渡すのか。その責任を自覚し、いま改めて問い直す必要があると感じています。

米国が示した「Quantity・Quality・Stability(量・質・安定)」は、市場が成熟した先に見える風景です。しかし日本は、まだ同じ地点に立っているとは言えず、人口減少、団塊世代の縮小、新規ゴルファー育成の遅れなど、私たちは現実を直視することが求められていると言えます。また、日本のゴルフにおいては、どれだけ文化と教育を根付かせられるかによって、生涯ゴルファーの数は変わってきます。商業的成熟の次に来るのは、文化的成熟だと思います。見よう見まねで一時的に楽しむ人を増やすのではなく、未来のゴルフ場を支える正統ゴルファーを育成すること。その積み重ねこそが、未来の施設数を確実に守る力になります。いま日本のゴルフに問われているのは、数を追う勇気ではなく、文化を育てる覚悟なのだと思います。

 

NGF FAR EAST
代表 宮田 万起子