初心者の「ゴルフの障害を打ち破る」費用 第3回(1〜5回)

初心者の「ゴルフの障害を打ち破る」費用 第3回(1〜5回)

前回の「時間」に引き続き、今回は「費用」についてご紹介します。

費用

  • 費用の心配。
  • ゴルフ用具に投資したくない。

との声をよく聞きます。

「費用」という障害を打ち破るための対策として、あるゴルフ場では、シーズン別パス(一定のシーズン期間内であれば固定料金で何度でもプレーできるサービス)を発行しているそうです。これは、ゴルファーが手頃な価格でプレーできる機会を提供する、ニューゴルファー誘致のための取り組みの一つです。その他の取り組みとして、(近隣地域住民からのゴルファー誘致・定着を目的とした)ゴルフ場所在地の住民証明カードの提示による割引その他特典、オンライン・ゴルフコース予約サービスサイトを通じたEメールによる割引も行われています。

また、ニューゴルファーに対して、その方に合ったクラブを、手ごろな価格で購入できるよう支援することもゴルフプロフェッショナルの仕事です。練習場でレンタルセットを試打できる環境を整えることや、ニューゴルファー向けに中古クラブを値下げ販売することもこうした支援の形の一つです。男性用ゴルフクラブの寄付や募金を募り、そこで得た資金をもとに、子供向けゴルフ教育プログラムを通じて、ゴルフクラブが子供達の手に渡るよう支援する活動もあります。これらの活動は初心者のゴルフ継続に役立ちます。

昨今の公共団体によって運営されているゴルフコースのグリーンフィーは平均35ドル/18ホールとかなり手頃な価格で提供されているにもかかわらず、さらに、多くのコースでロイヤリティプログラムや感謝プログラム、またはメンバーシップ/年間パスという形で、より利用しやすい価格システムによるサービスが設けられています。

まず私たちが気をつけなければならないことは、短絡的に割引合戦に持ち込み自分の首をしめてしまうことは避けなければならないということです。初心者体験割引などは初めての客を呼び寄せる手法としてとても良い案ですが、リピーターとして継続的に足を運んでもらう継続プログラムも同時に用意し、一度きりで終わらないように対処する必要があります。

すなわち、「費用」という障害に対する有効な対策は、単なる「安売り」ではなく、リピーターの代表であるゴルフスクール生にとって、継続的に通いやすいプログラムを提供することにあります。NGFではゴルフスクール生は「ベストカスタマー」であることを長年提唱し続けています。練習場の調査で、スクール生が年間に施設を利用する回数は平均70回、一回あたりの消費金額は約2,000円、年間約14万円を使っていると言われ、中堅練習場では総売上の70%がスクールによって支えられています。また、スクールでゴルフを始めた人は、他の施設に移動しない習性があり、当該施設を利用し続けるリピーターになるとも言われています。さらに家族や友人を誘って来場できる環境が用意できれば、その相乗効果は計り知れない可能性を秘めていると言えるでしょう。これは練習場だけでなく、ゴルフ場にも当てはめて考えられる提案です。

参考資料1:ゴルフ経営原論/ 第一部ゴルフビジネス/ 第一章マーケティング/ 6.ゴルフ次世代ベストカスタマーの研究/ゴルフスクール生( https://www.ngf-fe.co.jp/member/g/software/text/GB/GB_1_1-6.html)

また、ニューゴルファーにリピーターとして継続的に足を運んでもらうための工夫として、週末にゴルフ場で家族と一緒に過ごすライフスタイルを提案することも考えられます。そもそも日本のゴルフ場は、家族と共に「余暇」を過ごせるように設計されていません。日本のゴルフ場の成り立ちとして、ゴルフ場の会員権売買、練習場の球売り・打席売り、用具の販売と、一貫して物販での収益を目的として運営されてきた歴史があるからです。そのことを踏まえて『ゴルフ経営言論』の「戦後の余暇」、「余暇の意味」、「非日常的な余暇」、「余暇のゴルフビジネス」と順番に読み進めていただければ、日本のゴルフ場が抱えるこうした問題点を理解いただけるかと思います。最近では、昭和のゴルフのように週末は家族を置いて一人ゴルフ場で過ごせる人がどれだけいるでしょうか。米国のゴルフ場のように家族が一緒に過ごせるゴルフ環境を提供できなければ、今後、日本のゴルファー人口を増やすことは難しいかもしれません。

参考資料2:ゴルフ経営原論/ 第一部ゴルフビジネス/ 第五章ビジネスポリシー/ 3.余暇事業としてのゴルフビジネス ( https://www.ngf-fe.co.jp/member/g/software/text/GB/GB_1_5-3.html)

このように、「費用」というゴルフビジネスの障害を打ち破るためには、「価格」だけにその回答を求めるのではなく、現代に生きるニューゴルファーにとって、何が一番求められているのかをまず考える姿勢が大切かと思います。こうした意味では、継続できるようなプログラムを比較的手頃な価格で提供しつつ、知的好奇心を刺激する質の高いゴルフ文化や教育を提供することができれば、この「費用」の問題はクリアできるかもしれません。

NGF FAR EAST 代表  宮田 万起子

 

会員用参考資料:

参考資料1:ゴルフ経営原論/ 第一部ゴルフビジネス/ 第一章マーケティング/ 6.ゴルフ次世代ベストカスタマーの研究/ゴルフスクール生( https://www.ngf-fe.co.jp/member/g/software/text/GB/GB_1_1-6.html)

参考資料2:ゴルフ経営原論/ 第一部ゴルフビジネス/ 第五章ビジネスポリシー/ 3.余暇事業としてのゴルフビジネス ( https://www.ngf-fe.co.jp/member/g/software/text/GB/GB_1_5-3.html)