ジュニアゴルフの取組みについて

ジュニアゴルフの取組みについて

学びの環境において、これからの子供たちに求められることは、独立心と計画性を養うことにあるのではないかと思っています。周囲に合わせて行動するというよりはむしろ、今後はオンライン授業などを通じ、主体的に自分が何を学びたいか、自身のペースを決定し行動する必要が求められるのだと思います。私たち大人は、子供たちの自立を促し、主体的な目標を実現するためのプランを一緒に作っていく手助けをする役割を担うことになるのかもしれません。机の上での勉学だけでなく、ゴルフというスポーツが、こうした新たな教育モデルに貢献できる余地は大きいものと考えています。

 

人間力を育てるジュニアゴルフ

欧米の学校教育の一部では、子供に向けた倫理上の行動規範としてゴルフが取り入れられてきた歴史があります。日本の子供たちがグローバル社会で活躍するのに必要な倫理感覚を身につけるためには、ゴルフを教育という観点から取り込むことも有効と考えらます。ゴルフは、特別な運動能力が求められないため、万人に向いているスポーツと言い得る一方で、運動能力よりも社交性や協調性、セルフマネジメント能力が深く求められ、人生や社会の縮図に例えられるスポーツだからです。娯楽だけでなく教育という観点で、大人がゴルフを深く学び、子供たちに伝えて行くことができれば、ゴルフの意味や価値が大きく変わっていくのではないかと期待します。 

NGFにはゲイリー・ワイレン著の「ジュニアゴルフプログラムの計画と運営」という冊子があります。その中で、私が1番驚かされたことは、プロゴルファーを養成するための技術トレーニングではなく、ジュニアゴルファーが、大人になるために必要な人格形成を養うための行動計画を説く内容だったからです。薄い冊子ではありますが、一つ一つに意味がある行動計画には、心を揺さぶられる思いがあります。それは、一流選手を目指すことが全てではなく、どのような社会に出ても通用する人格者として成長して欲しいという切なる願いを感じ取ることができます。ゴルフが「生涯にわたる楽しみ」として子供達の人生に与えられるとしたら、それはとても価値あるものになるでしょう。

この本の序文の中でもジャックニクラスは、ゴルフは全ての子供たちにとって自己表現の機会が与えられる場であり、自己依存と自己抑制の偉大な教師であると言っています。

例えば、1ホールだけを12分以内に一人でプレーするという能力テストがあります。これはトレーニングの早い時期にスロープレーの問題を認識させ、効率の良いペースを習慣づけさせる目的があります。これは社会に出てからも、期限内で仕事を行う意味を理解し、納期を守るために望ましい習慣を身に着ける能力を育成することに繋がります。さらに言えば、最後までやり通す忍耐力を養成し、人間的成長を促しているのです。 

同著は、個人競技だけでなく、団体競技についても経験させることを求めています。団体競技を通じて、他のチームメンバーを助けること、グループの目標のために個人的栄光を犠牲にすること、自分があてにされるということがどのような気持ちになるのかを知ることは、貴重な教訓になると書かれています。言葉を変えれば、他人を思いやり、心を配ることの大切さを学ぶ機会をあえて用意することの重要性を説いています。

 

NGFの経営原論の中でも、ジュニアスクール&クラブの計画と運営について記載があります。例えば、経営原論は、ジュニアクラブを運営するときに、豊富なプログラムや余裕があるカリキュラムを用意することで、ジュニアゴルファーが状況に応じた適切な対応をとる能力を身に着けることが可能になるとしています。ゴルフの基本精神は礼儀、正直、誠実、寛容、謙虚です。これらの精神がゴルフを通して身につく機会が得られるのであれば、社会に出たときに、誠実な人物として逞しく生き抜くことができるのではないでしょうか。それは恐らく、全ての親が自分の子供に望んでいることでしょう。

ゴルフ経営原論 – 第一部ゴルフビジネス – 第三章 インストラクション- 6.ジュニアスクール&クラブの計画と運営

 

NGF FAR EAST 代表  宮田 万起子